放置せずに適切な治療を
「なかなか咳が治らないな」と思ったら、まずはどんな行動を取りますか?一番望ましいのは早めの受診だとわかってはいても、仕事に家庭に忙しく、時間に追われる毎日。そんな中、たかが咳で病院に行くなんて面倒だ…と、市販の咳止め薬や風邪薬を買って対処してしまうことも。しかし自己判断で市販薬を服用していると、ぜんそく(喘息)の適切な治療を始めるのが遅くなり、その間にも気道の炎症は悪化し続けているのです。では治療をしないまま放置していると、どのようなことが起こるのでしょうか。
ぜんそく(喘息)かもしれないのに、放置していると…
絶対に防ぎたい「リモデリング」
リモデリングとは「再構築」という意味です。発作の状態になると気管支壁が一時的に破壊され、その後修復します。この際、気管支壁は元通りに治るのではなく、ちょっと厚く硬くなってしまう事を指しています。リモデリングが進むと気道がせまくなるとともに硬くなり、伸縮性が失われていきます。このため、治療が効きにくくなり、発作も起こしやすくなってしまいます。
咳ぜんそくが、本格的なぜんそくに移行してしまう
咳ぜんそくとは、呼吸時の「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)のない、咳だけの症状が長期間(3週間以上)続くタイプのぜんそくです。喘鳴がないために風邪と間違われやすいのですが、咳ぜんそくを放置していると、典型的なぜんそくに移行することも多いのです。また慢性的な咳は、ぜんそく以外にもさまざまな病気が原因となります。たとえば、百日咳やマイコプラズマ肺炎や結核などの感染症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎、胃食道逆流症などが挙げられます。咳だけだからと油断せず、早めに医師の診断を受けましょう。
リモデリングを防ぐには、発作がなくても長期管理薬の継続を
「発作→気管支リモデリング→発作が起きやすくなり難治化→発作」という悪循環を断つことが重要です。一度気管支壁に生じたリモデリング自体の治療は困難です。発作が気管支リモデリングを呼び込みますので、ぜんそく(喘息)の原因である気管支の慢性炎症をきちんとしずめておけば、リモデリングを防ぐことができるのです。
ぜんそくの治療の基本は、発作をなるべく起こさないこと。長期にわたって適切な治療(長期管理薬、コントローラーと呼びます)をおこない、気道の状態を安定した状態に保つことで、発作が起きにくくなります。これにより発作に苦しむことのない、健康な人と変わらない生活を送ることができるのです。発作が出なくなったからと、自己判断でコントローラーを中断してしまうのは、避けたいことです。
病院に行く時間なんてない、そんな方こそ早めに受診を
大人のぜんそく(喘息)の発症年代のピークである40〜50代は、職場でも家庭でも中心的な役割を担っている世代です。多忙な中では、つい自分の体調を後回しにしてしまいがち。しかしぜんそくと診断されても、軽めの段階で診断を受け、治療をスタートすれば、気道の炎症がより短い期間で回復し、その後の寛解(症状がなく健康な人と変わらない状態)を長く維持できます。ぜんそくは慢性の病気です。適切な治療で上手にコントロールしていくことが大切なのです。咳が長引いていたら放置せず、必ず医師の診断を受けましょう。