ぜんそくの検査と診断
ぜんそく(喘息)の診断のためには、どんな検査をするのでしょうか。ぜんそくの検査には、呼吸や気道の状態を調べるもの、アレルギーを調べるもの、他の病気と見分けるためのものがあります。また検査は診断をするためだけではなく、重症度を判定したり、使う薬を決めるなど、治療計画を立てる目的もあります。医療機関へ足を運ぶ前に、どのような検査をするのか知っておくと安心ですね。
ぜんそく(喘息)の診断の目安
ぜんそくの診断は、下記のぜんそくの特徴(※1)にマッチするかを総合的に判断しておこなわれることになっています。
- 1.ぜんそくに基づく特徴的な症状…発作性の呼吸困難・咳・喘鳴・胸苦しさを繰り返す。症状はしばしば夜間や早朝に強くなる
- 2.可逆性の気流制限…気管支の狭窄程度に可逆性がある(大きく変化する)
- 3.気道の過敏性亢進…気管支がデリケートで敏感になっているため、刺激に対して過敏に反応している
- 4.アトピー素因の存在…アレルゲンに反応している様子がある(成人の場合は参考程度)
- 5.気道炎症の存在…ぜんそくは気管支の好酸球性の炎症が元です
- 6.ぜんそくに類似した症状を示す疾患の除外…症状が、ぜんそく以外の病気によるものではない
特に1、2、3、6が診断において重要です。
初診でもっとも重要なのは、問診です
ぜんそく(喘息)の診断では問診が大変重要になります。おおよそ下記のような内容をたずねられますので、スムーズに問診を進めるために、あらかじめメモにまとめて持っていくとよいでしょう。
[今ある症状について]
- 症状の種類(咳、呼吸困難、喘鳴、息苦しさなど)
- 症状はいつからか(数ヶ月前からなど)
- 症状の頻度(毎日あるなど)
- どんな時に症状が出やすい(強くなりやすい)か
- 発作の有無(ある場合は程度や頻度)
[症状以外で参考にすること]
- アレルギーの有無
- 既往歴(過去のぜんそく、他にかかっている病気、服用中の薬)
- 生活環境(本人および家族の喫煙、飲酒、睡眠、ペット)
- 家族歴(アレルギーを持っている家族の有無)
次に、検査の内容と目的を見ていきましょう。
呼吸や気道の状態を調べる検査
[呼吸機能の検査]
スパイロメーターという検査機器を使って、気道内の空気の流れ方を調べます。マウスピースをくわえて、息を最大限まで吸い込んだ後、できるだけ勢いよく最後まで吐ききります。最初の1秒間で吐き出した空気量を1秒量と言いますが、ぜんそく(喘息)の場合は気道がせまくなっているので、正常値よりかなり低くなります。
また、ぜんそくの発作時にも使う「短時間作用性β2刺激薬」を用いて、吸入の前後に呼吸機能検査をおこないます。低下していた1秒量が吸入後に劇的に改善(増加)すれば、ぜんそくの症状の特徴である「可逆性のある気道狭窄」を示したことになるので、診断の材料になります。
[気道の炎症の検査]
- 喀痰(かくたん・かったん)検査…気道に炎症があると、痰の中の好酸球が増えたり、気管支の細胞がはがれたものが多く見られます。
- 呼気NO検査…気道に炎症があると、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度が高くなります。
[気道過敏性テスト]
ぜんそく発作を起こす薬剤を吸入し、気道が刺激されてせまくなるかを調べます。刺激に反応した時の薬剤の濃度が薄いほど、気道が過敏になっていて、ぜんそくの可能性が高くなります。
アレルギーを調べる検査
症状が、アレルギーによって起こるアトピー型か、アレルギーとは関わりのない非アトピー型かを判定します。アトピー型であれば、アレルゲンを特定します。
[血液検査]
血液中のIgE抗体を調べます。IgE抗体は、アレルギー疾患があると高値を示します。特異的IgE検査では特定のアレルゲンごとに反応するIgE抗体の量を調べることでアレルゲン同定の参考にします。また好酸球の増加の程度を調べて、診断の参考にすることもあります。
[皮膚反応テスト]
アレルゲンのエキスを皮膚につけ、針で軽く刺して、アレルギー反応(かゆみや腫れなど)が起こるかを調べます。
[吸入誘発テスト]
疑いのあるアレルゲンを、濃度を薄くして少量吸入し、ぜんそく(喘息)の発作が起こるかを調べます。
ぜんそく(喘息)と、他の病気とを見分ける検査
症状が、「ぜんそくに似た他の病気によるものではない」ことを判定するために、胸部X線(レントゲン)や心電図、CTなどを必要に応じて行います。
(※1)厚生労働省『成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育』より
- 喘息の基礎知識